答 「色覚異常」の疑いがあるかないかを判定する検査で、
とても鋭く作られているため用途が限られます。
★ 現在30歳以上の方は、学校で検査表を使った検査を覚えているでしょう。
その検査表は、仮性同色表(かせいどうしょくひょう)といわれ、下の写真のようなだったでしょう。
検査を受ける人は色のつながりをたどって数字などを読み取ります。微妙な色の区別ができない少数色覚者は読み取れないように作られています。
また、少数色覚者は色の明暗差で判断するなどして「正答」とちがう読み方に導かれます。この仮性同色表の中で世界的に有名なのが通称石原式検査表です。
★ この検査表は、医師で東京帝国大学出身で当時陸軍軍医学校教官の石原忍が徴兵検査用に1916年製作した色神検査表にはじまります。1921年に「学校用色盲検査表(後に「学校用色覚異常検査表」と名称変更)」として出版されました。この学校用検査表が2002年度まで学校の健康診断で使用されてきたこともあり、色覚検査といえば石原式検査表しか知らないというほど広く使用されました。
★ 現在でこそ、パソコンの表示色が何万色となり細かい分類もできるようになりましたが、それらもない大正初期に、前述のように非常に微妙な色の区別によって精密に色を見分ける能力を判定する検査表がつくられたことは画期的なもので、世界的に高い評価を得ました。それは「色盲」者の検出率の高さでした。
★ しかし、女性の場合「色覚異常」の判定を受けた約半数が、精密検査では「誤判定」だという調査結果もあります。もちろん、男性と女性で微妙に色覚がちがっていることの表れですが、科学の進歩により、他の検査方法も考案され、仮性同色表の信頼性は薄められていったともいえます。
★ Q4でも引用した「色覚マニュアル」は、色覚検査表について要約すると次のように説明しています。
色覚検査表は過大評価されがち。色覚検査表で、確定診断は不可能。
見分けにくい色には個人差があり、ある色覚検査表では色覚異常と判定されても、他の色覚検査表では正常色覚と判定されたり、いずれの色覚検査表も正読できる色覚異常者も存在する。
色覚検査表は、色覚以外の能力にも依存していて、特に低学年の児童では異常と正常を明確に区分することは不可能。全表正読した場合にも100%正常といえず、誤った場合にも100%異常と確定することはできない。
程度判定の基準は色覚検査表により異なるなどから、程度表による評価はあくまでも参考資料にとどめるべき。特に「強度」と診断された場合は、就職や資格試験の受験資格に関して制限を受ける場合があるので、色覚検査表で程度判定をしてはいけない。
色覚検査表での色盲、色弱、全色盲の診断は全く不可能。
第1異常と第2異常を100%分類できる色覚検査表はない。
色覚検査表について全文 クリックして拡大できます
★ もしあなたが、検査表を使った検査結果だけで自分は「色覚異常」と思っていたとしたら・・・、この説明を読んだら本当かどうか心配になりませんか? またはあなたが、検査表の検査だけで「正常」と思っていても、本当かどうか心配になりませんか?
色覚検査表は欠陥がある検査? そうでしょうか?
★ 石原式検査表などではっきり診断できないのは、ヒトの色覚が「正常」「異常」に2分化できるものではなく幅広い多様性があるからだと考えれば合点がいきます。
つまり欠陥というより、検査そのものがヒトの色覚を測れるものではないということだと考えられます。
★ 2013年、まるで学校での色覚検査「再開」にあわせたかのように新しく「石原色覚検査表Ⅱ」が3種類発売されました。そのなかの「コンサイス版14表」が以前の学校用検査表に代わるものと位置づけられています。それに添付されている「検査の実際と判定」には次のような記載があります。
検査では、被験者に第1表から第8表を順番に読み、次いで第14表から第11表を溯る順番で読むように指示する。一覧表に示されている正常色覚者の読み方(「正読」)と異なる場合はすべて「誤読」として記録する。 第1表から第8表および第第14表から第11表の計12表のうち、「誤読」表数が1表以下であれば正常色覚と判定する。(中略)「誤読」表数が4表またはそれ以上であれば先天色覚異常と判定する。「誤読」表数が2または3表の場合は色覚の判定にはアノマロスコープを用いた検査が必要である。(以下略) |
★ 引用中の「一覧表」見ると、第8表は、多数色覚者には読めない表となっています。この説明でいくと第8表以外に一つ読めなくても多数色覚者と判定されることになります。
つまり、少数色覚でなくても読みまちがえる表を含んでいるのです。
★ この検査表には、くわしい検査方法が指示されています。 ↓下の画像をクリックしてみてください。
★ この画像を見て「あれ?」と思うことはありませんでしたか?
希望者には学校で色覚検査ができることを学校は周知するよう指導されています。ではだれが検査するのでしょう? そりゃ保健室の先生、養護教員でしょう・・・と答えられるかもしれません。
養護教員は医療行為はできません。ではここに記された「「本器は医師等医療に精通した者がご使用ください」の医師と同じ「医療に精通した者」にあてはまるのでしょうか? 国や眼科医会はだれが色覚検査をすることを想定しているのでしょうか?
★ この添付書類の記載とは裏腹に、石原式検査表は、安価で、しかも検査をする側に専門的な知識や熟練も必要とせず、学校では一冊の検査表で多くの子どもたちの検査が短時間で簡単にできるものとされています。かなりの矛盾を感じませんか?
★ これまで述べてきたように色覚検査といっても、色の感じ方そのものを測定する検査ではありません。実際は一部の微妙な色を判別できるかどうかという能力検査です。
あなたが色覚検査を受けたり、あなたのお子さんが石原式検査表で検査を受けるかもしれません。
そのときには、もう一度この説明を読み返してください。
こうした知識をもっていないと、診断名だけに惑わされることになると思われるからです。
Q6 治療で治るの? 矯正めがねは? 前へ← →次へ Q8 ほかにどんな検査方法があるの?