Q1 色覚異常や色盲などいろいろな言葉を聞くのですが、
   どの言葉を使用するべきなのですか?

 

お答えします だれもが医学用語を使う必要はありません。
       ここでは以下の理由から、「少数色覚」を基本的に使用します。

 

 

★ 日本では長い間、色覚検査で「異常」と「正常」に分け、「異常」を「色盲」という医学用語を使用してきました。これは英語の”Color blindness”の訳です。現在は「色覚異常」と医学用語は変えられましたが、それでも「誤解を与えて問題」とか「『異常』という表現は適当ではない」と感じる人が数多くいます。そのため、医学界以外のマスコミや団体などは、「色覚障害」「色覚特性」などを使用したりしてきました。

 

★ 2017年には日本遺伝学会が「ヒトの色覚のちがい」と「色覚多様性」と呼ぶことを提唱しました。ただしこれはヒトの色覚のちがいを表す言葉で「色覚異常」に代わる表現ではありません。近年では、色覚のちがいによる社会的な弱者という意味で「色弱(者)」という表現もあります。

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★ 自身に色覚のちがいがあることを発見し、その最初の研究者ともいえるイギリスのジョン・ダルトンの名前から、それは最初”Daltonism”という言葉が使われました。1827年のことです。しかし当時「色覚異常」は「劣った」ととらえられていたため、その呼び方ではダルトンの名を貶めると考えられ、イギリスでは”Color blindness”が使用され、それが世界中に広がりました。これが日本語で「色盲」となったわけです。
 ダルトン自身は自分の色覚が「劣った」などという意識はまったくなく、色覚のちがいを面白く好奇心を満たすものと考えていたといいます。しかし周囲がそうとらえなかったのです。

 

★ 用語の模索は海外でも行われています。 “Daltonism”が使われたり、新しく”Color vision deficiency(CVD)”と呼ぶなどです。これは、日本以外の国でも少数派の色覚に対する正しい理解が進んでいないことの表れだともいえます。

 

 

★ 21世紀、色覚多様性は優劣のちがいととらえるのは一般的ではなくなりました。これは世界的な色覚に対するさまざまな分野の研究にもとづくもので、色の感じ方は1つの基準のもとで行われる色覚検査により「異常・正常」という2分化できるような単純なものではないことが明らかになってきたのです。ヒトの色覚はヒトが今日まで進化する過程で身につけたわたしたちに必要な多様性の一つで、同じヒトの中でもさまざまな色覚多様性があり、それぞれの色覚に「存在する必要性がある」という考え方が広く知られるようになりました。

 

 

★ 色覚多様性をどうとらえるかという理解・解釈で”Color blindness”の言いかえはさまざま考案されています。そのなかのどの呼び方が正しいかというより、どういう点が重視されているかのちがいだといえます。

 

 

★ わたしたちカラーメイトは、色覚のちがいは色彩判別能力の優劣ではなくマジョリティとマイノリティという数のちがいだと考えています。
 また、わたしたちが考える「色覚のちがいによる人権問題=色覚問題」は、多くの人が読める色覚検査表を「読めない」とか「色の判別が多くの人とちがう」という「その人たち」が原因の問題ではなく「多数派と少数派」のちがいによる問題だと考えています。
 色覚検査で「『色覚異常』と判定される人(それだけで「色覚異常」と診断はできません)」は少数派であり、さらにそれが多数派を含む多くの人に認知・理解されていないことにより社会的弱者という立場に置かれ、排除されたりする状況が現在でもあるのです。

 

 

★ このような点からわたしたちは、多数派の色覚(をもつ人)を「多数色覚(者)」、少数派の色覚を「少数色覚(者)」という言葉を基本的に使います。ただし、歴史的経緯や引用、または語義の説明上「色覚異常」等、少数色覚者に対して差別的表現ともとらえられる用語も使用する場合もあることをあらかじめお断りいたします。

幸田露伴「潮待ち草」(1906・明治39年刊)より

 

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