今後の健康診断の在り方等に関する検討会(第7回)議事録

 

以下は、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sports/013/shiryo/1341651.htm で、かつて公開されていたものをテキストで貼り付けたものです。引用者(尾家)によって一部省略している部分があり、それには(引用者略)などの表記を加えていますが、それ以外は表記を含めてすべて当時公開されていた原文どおりです。

 

│1.日時  平成25年8月15日(木曜日)14時~16時30分 │
│2.場所  文部科学省 13F1会議室 │
│3.議題  各分野の課題について  個別の健康診断項目について │
│     「学校病」について    その他 │
│4.出席者 │
│委員 座長 衞藤 隆   社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所所長 │
│   石川 美和子 埼玉県立川口北高等学校養護教諭 │
│   木村 雅治  公益財団法人群馬県スポーツ協会事務局長、群馬県総合スポーツセンター館長│
│   近藤 太郎  公益社団法人東京都医師会副会長 │
│   斎藤 秀子  社団法人日本学校歯科医会常務理事 │
│   濁川 こず枝 桐生市立清流中学校養護教諭、全国養護教諭連絡協議会会長 │
│   道永 麻里  公益社団法人日本医師会常任理事 │
│   南 良和  全国学校保健主事会会長、和歌山市立河北中学校校長 │
│   雪下 國雄  公益財団法人日本学校保健会専務理事 │
│ │
│文部科学省   和田企画官、丸山学校健康教育課課長補佐、知念学校保健対策専門官 │
│    岩﨑健康教育調査官 │
│オブザーバー 厚生労働省健康局がん対策・健康増進課、雇用均等・児童家庭局母子保健課 │
│ │
│参考人  宇津見義一 公益社団法人日本眼科医会常任理事  宇津見眼科医院(横浜市)院長│

5.議事録
【衞藤座長】挨拶(略)

 

【事務局】(引用者略)本日、各分野の課題に関して有識者からのヒアリングを予定しております。本日は、座長と相談させていただきまして公益社団法人日本眼科医会常任理事の宇津見先生に参考人として御出席を頂いております。(引用者後略)

 

【衞藤座長】(引用者略)本日は眼科領域の課題について日本眼科医会常任理事の宇津見先生より御説明をお願いいたします。先生、15分程度でお願いいたします。

 

【宇津見理事】日本眼科医会で常任理事をしております宇津見と申します。今日は、とても良い機会を頂きましてありがとうございました。では、本題に入りたいと思います。
 まず色覚問題が第一番目でございますけども、この資料の1-1の中に三つの問題。色覚問題とカラーソフトコンタクトレンズの問題、更に近見視力の問題を今日述べさせていただきます。資料の1-1に、資料として1-2にその資料が記載されております。ただ、これは文献ですので多くなりますので抜粋して、要旨を述べさせていただきました。
 では、説明させていただきます。資料の1-1でございます。平成14年3月に学校保健法施行規則の一部改正において児童、生徒、学生及び幼児の健康診断の必須項目から色覚検査の削除が決定いたしました。事前の同意があれば、色覚検査を実施してよいが実際には平成15年より、全国のほとんどの学校で色覚検査が実施されなくなりました。平成16年に日本眼科医会の47支部の約90%の学校保健担当者は、色覚検査の実施を望んでおりました。色覚検査を実施している小学校の割合は、ほとんどの学校で実施が約10%、半分ぐらいの学校で実施しているが約13%であり、一部の学校では実施しておりますが大半の学校では実施しておりませんでした。ちょうどこれ平成14年に官報で出されて、翌年の平成15年から色覚検査の削除が実際に実施されましたけれども、平成14年に日本眼科学会、日本眼科医会は文部科学省に対して色覚検査の削除に対しては反対しましたけども、それは受け入れられず、このような健康診断から色覚検査が原則、削除されたという経緯でございます。10年を経過した現在では中高生の多く、自らの色覚検査の有無を知ることなく、進学・就職に直面しております。今後、進学・就職、さらには就業の場合において色覚のトラブルの増加が懸念されております。
 日本眼科医会は、平成22から23年の2年間の間に色覚異常の受信者に関する実態調査を実施しました。全国657の眼科診療所から941件の報告がございました。この報告は非常に今までの色覚の調査の中では、日本では母集団としては最も多いものだと思います。その結果、受診動機では中学生、高校生は今後の人生を左右する進学・就職を見据えての受診と思われました。一方、眼科を受診するまで異常があることを認知していた割合は中学生が54.7%、高校生が54.5%であり、半数近くが自らの色覚異常に気付かずに進学・就職に臨んでいたことが明らかになりました。また、学校での色のバリアフリーは進展せず、学校生活での色覚のトラブルが明らかとなりました。平成15年度から色覚検査が実施されなくなって10年間、日本眼科医会では希望者に対する任意の色覚検査を奨励し、学校での色のバリアフリーの充実に力を注いでまいりました。
 色のバリアフリーは文部科学省、日本学校保健会と連携し、パンフレットを作成したり、全国の学校関係者に配布して、養護教諭に向けた色のバリアフリーを理解するためのQ&Aを日本学校保健会のホームページにも掲載し、更に各地区の教育委員会の関連研修会にて講演等の多くの啓発を重ねてまいりました。しかし、多くの教育委員会は学校保健法施行規則から色覚検査が削除されたことをもって色覚検査を実施しないことと捉える傾向が強く、任意の検査として継続できた地区はごく一部にとどまり、色覚異常への認識は年々薄れ、学校での色のバリアフリーの進展も見られない状況が続いております。
 結論といたしまして、日本眼科医会といたしましては今後、学校での色覚検査は学校での色覚のトラブルを回避するために小学校低学年。以前は4年生のみに行っておりましたけども、低学年に実施すること。また、進路指導の一環としては中学1、2年で再度実施することが必要であると考えております。そのためには学校関係者、保護者に対しての同意書付きの説明文を配布することを周知し、希望者に対する。これ抜けております。色覚検査に実施促進を望むということでございます。色覚検査というのは、遺伝子検査にもなりますので、やはり同意を得ないとちょっとまずいかなということで。
 実際の資料の1-2を御覧いただきたいんですけども。ページとしては、1-2の3ページです。色覚に関わるエピソードということで、何と660例の事例報告が2年間の間にございました。ここで見ていただくとお分かりになると思いますけど、具体例ですけども未就学児では、ゲームの充電器の橙(だいだい)とか黄色の区別ができないと。周りの者が、気が付く場合が多いので、園の先生が気が付いて保護者に伝える例が多かったことですね。そのような代表的なことです。小学生においては、黒板の赤いチョークを読み飛ばしたと。色間違いをして先生にふざけては駄目と、そのようなことを言われてしまうと。色使いが違うことを級友に、からかわれたり、自分は色弱だと思った小学生3、4年生頃から少しずつ気が付いてきているということでございます。中高生になりますと以前から変だなと思っていたけれども美術の授業で先生に指摘されたり、部活や周囲の者から指摘されたり。そういう周りの方から指摘される場合も多く見られます。日常生活は、これは結構よくある話なんですけども、焼き肉の色具合がよく分からない。茶色の犬、ハンバーグを緑と言ったりですね。そういうことはよくあるんですけども。実際に一番の問題は進学・就職ですね。工業高校に進学したけど、入学の健診で色覚異常を指摘されて困ってしまったというようなこと。更に自衛隊志望だったが、色覚異常と分かり断念したと。更に警察官になる試験を受けていて色覚異常を指摘されたと。次に自衛官、警察官、消防士、航空、船舶等、色覚の制限の多い仕事があるということです。更に美容を志す人たちにとってはヘアカラーの区別がなかなか困難であると。更に非常に繊細な色使いですね。これがうまくできないので就職後に困ると。最後に仕事に関するエピソードとして、刺身の鮮度が分からず困ってしまったと。あと、クリーニング業の染みの色が分からないというようなことがございます。
 以上で、色覚異常の件は終わらせていただいて、次に二番目カラーソフトコンタクトレンズの学校での使用についてと。(引用者後略)

 

【衞藤座長】(引用者略)

 

【濁川委員】宇津見先生ありがとうございました。本校での色覚検査は現在しておりませんが、中学生になると、やはり美術科の先生からこの子の色使いがちょっとおかしいなというような話がありまして、直接、私が検査することはできないので一応、担任の先生から保護者の方に学校の様子をお話しするとともに、「学校でも検査できますがどうしますか?」とお伝えしてもらいます。その後承諾がとれれば健康相談を使って、色覚検査をする場合もあります。また、親御さんの方から年の離れた兄がそうだったのでこの子もそうかもしれないです、先生、検査してくださいと言われた場合にはしています。そうなるとやはり何名か、年間二人ぐらいですけど、色覚検査を私の方でして、病院に受診というようなことはります。困った親御さんに関しては健康相談を使ってやっているという現状はあります。多分、本校だけではなく色覚検査を実施していない学校でもそのような形でやっているところはあると思います。

 

【宇津見理事】よろしいですか。約半数の人は自分の色覚異常を知らないで、就職・進学に臨むわけですね。ということは、本人にとってはものすごく大変なことであって、平成15年度の施行された規則によりますと実は希望者にはやらなければいけないと。各地区でやっているところ、やっていないところあるんですけど。教育委員会によっては、もう本当にやる必要ないと。この施行規則を、この間まで山口県にあったんですけども、それよく読んでくださいって納得されました。というのは、全然それをしっかり読んでいないということなんですね。ですから、例えば逆に私、横浜なんですけども、横浜市では教育委員会が実は小学校、中学校に対してこの文部科学省の通知をですね。再確認をして、希望者にはやってくださいと言ったんですけども、その中で、ある学校では500人受けたんです。すごいことなんですね、実は。それで実は、その中に色覚異常の最もグレードの高い色覚異常。白黒しか分からない子が出てきたというようなこともありますし。現実問題、これ予想されていたんですよ。実は平成14年から15年に切り替わる、平成15年から日本眼科医会で学校保健担当の常任理事やっていますけど、文部科学省で説明をしたときに将来こういうことが起きるということは分かっているので、どうして削除するんだということを言いました。結局、色覚検査をしなければ分からないし、先ほど話したように遺伝子検査ということも大事だと。ですから、希望者にせざるを得ないなという。そのへんを下村大臣が皆にやりましょうとテレビで4月に言われたんですけども。やる上で、最低限の希望者に検査を募る。結局、そういうのはよく反対派の方もいらっしゃるんですけど、ほかでやればいいと。ほかで、どこでやるんでしょうかね。自己責任とれない子供たち。親もとれない親御さんたちたくさんいらっしゃるので分からないわけですね。例えば、こういう事例があります。おじいちゃんが孫を連れて来院し、色覚検査をしてくださいと。そして、この子、色覚異常ですがプール入っていいですかと言われて、絶句したんですけども。そんなレベルの方ってたくさんいるわけですよ。有識者ではそんなこと考えられないことなんですけども、やはり自分の色覚特性をですね。十分分かっていれば将来に対して方向性が分かってくるよと。正しい知識を啓発してきていますけども、全然駄目ですよね。日本学校保健会のホームページの中にも保護者向けの説明文とか学校の養護教諭向けの説明文、保護者用の説明文。そういうの全部ひな形作って、委員会作ってやったんですけども。そういうのやっていっても全然、全く効果がなかったということで、それはやはり国の責任ではないかと考えておりますけども。

 

【衞藤座長】ほかにいかがですか。

 

【濁川委員】いいですか、また。

 

【衞藤座長】はい、どうぞ。

 

【濁川委員】ここに宇津見先生の資料の中に書いてある日本学校保健会と文部科学省で色覚バリアフリーのパンフレット作ったとありますが、そのとき、私もそのパンフレットの作成に携わらせていただいて、養護の先生方が学校で先生方に色覚検査がなくなって希望者はしますよということでしたが、教員への指導もきちんとされていないという現状が分かりました。それともう一つ、色覚検査を今までしている中で非常にほかの検査と違って気を遣う。一人一人しないと、ということでとっても時間がかかる検査だったわけです。希望者とか、又は健康相談ですることでその時間は短縮できたと思います。その時間を他の検査に使えるようになったと現状もあります。また色覚検査を実施するというのは学校の中では、大変なことかなという気もいたします。

 

【宇津見理事】平成14年までは全員やっていたわけですよね。私もいつも思うんですけど、一つのことやろうとすると全部反対されてしまいますから。結局、全員にやってほしいけど、ただ希望者を募ってくださいよと。でないと大変か、その子の将来を決めることですから。それがなくなって、学校現場ですと本当に私も横浜ですから何回やっても全部反対されましたよね。自分たちが法律、教育委員会が法律守っていないことをやって、新聞にまで出てもやろうとしなかったですよね。就学時健診の視力検査などです。何でそこまで、今までできたのが今度は新しい、横浜は子供の人数が多いからできないとかですね。神奈川県は視力検査を実施していなかった地区として全国でワースト2なんですよね。私は教育委員会の方に何で横浜だけ人数が多いのでできないとか言うんでしょうか、ほかはもっと人数が多くてもやっているのにと言いました。現場は、ものすごく大変なのはわかりますが。しかし、実際に視力検査を導入するのに3年かかってやってもらえることになりました。ですから、色覚検査も同じようにやってほしい。我々が主張するのは先ほどのエビデンスです。一部の人たちを報告しているのもあるんですけども、900例余りの全国調査の事例っていうものはないんです。例えば、学会の専門家とか色覚検査の削除に賛成の人たちは、一部の資料だけ基づいてお話をしています。今回の調査の母集団は、一応日本です。それで明らかになったということですが、ほかでも全国調査をやっていただきたいんですけれどなかなかそういう調査は難しいです。大変なのは分かるんですけど、それでいいのかということですよね。どこまで子供たちに対して責任をとっていくかと。そんな大変、僕もいつも色覚検査、実際にやっていますけど全然大変じゃないですよね。ですから、学校現場で実際、僕出向いてやっていますけども。そのへんがちょっと認識の違いがあります。しかも、従来はやられていたものですから。

 

【衞藤座長】いかがでしょうか。

 

【雪下委員】ちょっとよろしいですか。今、認識している子供たちは約半数おられるということで。それで、その子たちについての健康指導というか、健康相談とかそういうところを利用して眼科医会の方で今、実施されていること、あるいは、これからこうしようと思われているようなことはありますかね。

 

【宇津見理事】資料の1-2の6ページですね。実際問題、ここにもたくさんいろんなこと、たくさんやってきました。学校現場で啓発をしてくださいということで、健康教育にて啓発してくださいと。例えば、実際にやるのは各地区の学校医であれば眼科医会の先生方が学校に出張していただくと。例えば、大変恐縮なんですが僕は横浜なので、横浜では何で色覚検査は全員にやってくれるように再通知を横浜市の教育委員会に出したかというと、熱心な働きかけです。養護教諭、学校関係者に対しての啓発講演会ですね。そういうのをたくさんやってきたということでございます。行政の上からお話がいったとしても末端の各地区ではなかなか敷居が高いのが実際です。いろんなところで啓発活動、全国各地でいろんなところでやってまいりました。文部科学省の指導主事が集まる全国の大会が1月にございますよね。そこでも色覚のお話をして、講演後がものすごかったですね、質問が。いい方の質問ですよね。それは困っただろうということなどですね。あと、昨年も濁川先生が会長をされている全国養護教諭の全国連絡協議会ですか。そこでも色覚のお話なんかさせていただいて。非常に感銘を受けるような質問がたくさんありました。現実は、実際は非常にやるのはなかなか難しい。その学校医によって対応違いますよね。よく日本医師会の方で、こんなこと言っていいのか分かりませんけども、眼科学校医不要論とか耳鼻科学校医不要論とか前、出たんですよ。眼科医は何もやらないじゃないかというわけですよ。じゃあ、内科やほかの科の先生はやっているのかって、その先生によりますよね。眼科だって一生懸命やっている先生はいらっしゃるわけで。それを眼科は要らないよというふうに言われてしまうと非常に心外なんですけれど。というのは、何の科も必要ですよね。麻酔科だって必要だし、精神科だって必要だし、婦人科だって必要だし。特に目というのは本当に大事ですから。色使いのことなどなんかは。学校の先生自体がそういう色のことを分かっていませんから、子供が色間違いすると怒ったりするわけです。怒っても子供には責任がないわけです。日本というのはそういうことについては、非常に昔は差別をしたわけです。それは本当によくないことです。遺伝子検査みたいにお前、背が小さいからよくないよとか、そんなこと言うのと同じようなことですから。海外では余り色に関しては、神経質になっていないです。日本はすごくそういうことに対して過敏な国だと思います。ただ、実際問題、一番の問題はやはり仕事上の問題です。先ほどお話ししたような事例もたくさん聞いているんです。例えば、焼き物で色の微妙な加減でお前おかしいんじゃないかとクビになったり。あと電気の配線。配線変えますよね。配線は色で決まっていますから、それを間違えて会社ごと、仕事を全部キャンセルされたりとか。そういうような事例とかがたくさんあるんですね。ですから、自分の色覚特性を知るということは非常に大事です。じゃあ、ほかで誰がどこで色覚検査をやるんだとなったときに対案はないわけです。自己責任をとれませんから、子供は特に。大人でもとれない方たくさんいて。それは言えませんけども。ですから、希望者ということをやはり入れなきゃいけないと。ここですっぱり、今後も今回のチャンスを逃せば、今後また無理でしょうね。そういう国になってしまって。先進国と言われていてもそんなことが現状であるということだと思うんです。

 

【衞藤座長】どうですか。

 

【雪下委員】ちょっと今の宇津見先生、知ってて言われていると思いますけども。今日は、日医より道永先生も来ておられますけども、日本医師会で眼科学校医不要論、耳鼻科学校医不要論は一度も言ったことありません。これは国からの要望が一時あり、それで日本医師会で反対して。飽くまでも耳鼻科校医、眼科校医を守ったということですので、それだけは御確認を。

 

【宇津見理事】承知いたしました。私の間違えです。申し訳ございません。

 

【雪下委員】それと私申し上げているのは、自分が色覚異常と知っている子が半分いる学校での段階で健康相談なり、もちろん希望者を募って、そこで職業指導というか進学指導というかそういうのを全校に、眼科医がやっているところもあるし、全くしていないところもある。最低これだけのことはやるというような眼科学校医会の方から決めていただければ、助かるのかなと思うんですけどね。

 

【宇津見理事】先生、それ言うにはやはり法律に基づいて言わないと。

 

【雪下委員】希望者なら別に問題ないわけで。ただ、何回か学校の先生とも相談したことあるんですが、どういうふうに呼びかけるかというのがまた問題で。呼びかけで、色覚異常の人集まれと言うと、それは家族も嫌がるし、子供もそこで差別されるので嫌だ。そういうのでちょっと難しいことは難しいんですが、前もって健康相談みたいなものの中で、希望を学校でとっておく中にそういうのがあったらその子たちへの指導をするということでいくのか、そのへんちょっと難しいですけどね。

 

【宇津見理事】先生おっしゃるのはよく分かります。実際に眼科学校医が、熱心な先生がいても学校側が拒否される場合がある。それってすごく多いんですね。それで、それはやりませんと散々言われてしまって。逆もあるわけですね。養護教諭さんが一生懸命やっていても先生が全然やる気がない先生がいると。それは表に出せませんので。現実はそういう問題ですから結局、実際なかなかできない。ちょっと濁川先生にお聞きしたいんだけど、何で埼玉は、やっていないんですか。先生の学校がやっていないんですか。

 

【濁川委員】群馬県。私は桐生ですけど。

 

【宇津見理事】群馬でしたか。

 

【濁川委員】ただ、やってはいないですけど、先生のおっしゃる希望者というのはどこまでだか分かりませんけど、全くしないというわけではないです。

 

【宇津見理事】いや、全員に希望者を募っているわけですか。

 

【濁川委員】いえ。

 

【宇津見理事】そこが問題で、濁川先生であろう方がやられてもなかなか難しいと。

 

【濁川委員】保護者会でいろいろお話しする中で、健康診断があるので、こういう病気のことも御相談伺いますというふうには保護者会でお話ししますが、年間で二人ぐらい。

 

【宇津見理事】ですから、そのやり方でも結局、施行規則の中には希望者にはやりなさいよ、同意を得てやりなさいと文言が入っているわけですから。でも、実際には今は、お話しされたことが現実ですので。やはりそれをどう打開するかということは、ものすごく大変なことだと思うんです。ですから、そういうのを分かっていてお話をしているんですけども、実際、横浜では全員の保護者にそういう説明文をですね。希望者にはやると。ただ、横浜市だけです。神奈川県のほかの地区だとなかなかそれができない。やはり教育委員会がたくさんありますので。神奈川県教育委員会に言ってもすべては駄目です。なかなか難しいですね。

 

【近藤委員】いつもありがとうございます。教えていただきたいのは、僕は内科の学校医ですけれども、平成14年度までは色覚障害があった子供たちにどのような特性を眼科学校医としてはお話をして、どういうアドバイスをしたり、指導をされていたか。学校へどのように伝えていたかということと、それから10年たって医学が進歩しておりますから現在だったらどういうことが言えるとか。一つの目安みたいなものを学校に提示することはできるものでしょうか。

 

【宇津見理事】先生の二番目の質問、とっても難しいんですけども、最初の御質問なんですけど、実際に平成14年まではやはりいろんな経緯があるんですね。色覚検査を全学年にやっていましたが、確か1994年ぐらいだったと思いますけど、全学年、各学年にやっていたのが4年生だけでよいというふうになって、だんだん削減されていったということは事実です。実際に、僕が日本眼科医会に入ったのは2000年なんですけど、2000年と今じゃ全く違います。いわゆるデジタル化して、いろんな情報の提供ができるようになったと。文部科学省が色覚の資料というのを、学校側に配布したということも、それを知っている校長はほとんどいない。文部科学省の方として色覚の資料を、啓発をして、周知してきていると文言に書いてありますけども、それは実際には全然おかしいなと我々は思うんですね。実際の細かい、眼科医がどのような活動をしていたかということは細かいことはよく分かりませんけども、日本学校保健会の中で、そういう委員会の中ではお話があったと思うんですけど、そのへん衞藤先生、御存じでしょうか。健康相談小委員会とかございましたよね。

 

【衞藤座長】はい。事後措置ですか。

 

【宇津見理事】そうですね。事後措置です。

 

【衞藤座長】2000年ですから。

 

【宇津見理事】前ですね。

 

【衞藤座長】前ですか。日本学校保健会に健康診断調査検討小委員会。そこでは、この色覚の問題をどうするかという検討はしていないと思いますね。それは文部科学省、当時の文部省ですかね。政策決定としてですね、やめますというお話があって。その説明があって、ヒアリングがありましたけども、そのときの事後措置に相当する対応は先ほど先生の御説明にもありました色覚のバリアフリーというものを進めて、全ての子供が色覚に問題があったとしても対応できるような教育環境を作るというそういう方向の政策を実行していくという、そういう説明だったと思います。

 

【宇津見理事】ありがとうございました。

 

【雪下委員】ちょっといいですか。追加になりますけれども、先生、確か委員で出ておられたんじゃないかと思いますけれども。文部科学省に色覚異常の手引書を作れということで作られたものが、全部学校眼科校医に配られたものが、こんなのどうにもならんということで日本医師会の方に相談に来られて。日本医師会から眼科学校医と話合いで色覚異常に対する指導書を作って、これは眼科学校医だけじゃなく学校医全部に知ってもらおうということでそのとき15万部、日本医師会の全会員に配布したと。だから学校眼科医はそれを皆持っているはずだと思うんですが。それにはいろんなそういう学校健康相談等を利用して何とか希望の者については指導するようにということは書いてあるのです。私、宇津見先生に申し上げているのは大変熱心にやっておられる眼科の先生は多いんですが、全くやっていなというところがあるので、これは学校耳鼻科医会の場合にも申し上げたんですが、平均、やはりある程度のところは申し合わせておいてほしいと思うのです。そういうのを学校眼科医会の方で作られていれば、もちろん学校医の方にも学校側にもそういうプログラムを言っておいていただければ、これを文部科学省の方が全然反対するとかそういう問題ではないように私は思いますけれども。

 

【宇津見理事】お言葉ですけど、先生おっしゃるように、本当にそういう啓発を散々やってくれと各支部で、今までずっと活動してきたわけですね。ですから、その結果なかなか先ほどお話ししたような学校医が積極的でも学校側が反対されてしまうと。各地区の教育委員会の問題もかなりあるんですね。ですから、そのへんがそれを提示して。今までも出しているんですね。

 

【雪下委員】学校で反対するというのは。

 

【宇津見理事】教育委員会がもうやらなくていいと言う。

 

【雪下委員】色覚検査はもういらないということですか。何でも駄目ということですか。

 

【宇津見理事】そうです。ですから、全然取り合ってもらえないと。眼科医会の責任者が言ってもですね。ですから今、先生がお話ししたように平成15年の12月に日本医師会の会員全員に日本医師会が色覚マニュアルというのを全部配布していただいたんですね。それ非常に有り難かったんですけど。ですから非常に難しいかなと。あと先ほど、近藤先生が新しいことですね。医学が発達したからといっても色覚異常を新しいテクニックで変えることはできませんし。現実としては我々としてはエビデンスを出して、こういう困っている事例がたくさんいるんだよということしかできないんですよね。

 

【近藤委員】例えば対応法とかね。指導とかアドバイスの仕方が変わってきているのであれば、先ほどのマニュアルを改めて改訂して、配り直さないといけないなとは思っています。

 

【宇津見理事】対応法ですか。

 

【近藤委員】色覚へのですね。指導法の在り方とかマニュアルの改訂版があってもよいかなとは思います。

 

【宇津見理事】先生分かりました。先生おっしゃるのは、先ほどお話しした色覚マニュアル。あれ結構難しいのでもっと簡易に出してもいいと思いますけども、それは日本眼科医会の方からも。一番いいのは日本学校保健会のホームページに、そういう色覚バリアフリーということで、たくさんの色覚の資料を出ています。現実にもう今、見ていただければありますし。日本眼科医会の方からも今回の資料の色覚の下の方にも書いてありますけども、平成19年の5月に「色覚異常を正しく理解するために」という患者向けの冊子ですね。それで平成22年の4月には「小児に対する色覚一般診療の手引き」というものがあります。これは委員会で作って、眼科医全員に配布してあります。先生おっしゃるように、これはかなり中身が濃いもので、分かりやすいものでございます。ですから今まで努力を重ねてきています。

 

【近藤委員】バリアフリーに関しての指導書を使いましてね。幾つかの地区の学校保健会や、校長先生方が出られる会でも講演させていただいたことがあります。東京都医師会学校医会の研修会でも幾度か取り上げました。例えばグラフの書き方にしても色の違いだけでなく、斜線を使ったりとかドットを使ったりというやり方をやってまいりましたけど、実際にはいろいろ使われる医学会の中でのグラフにしてもバリアフリーが進んでないなとは思いますね。

 

【宇津見理事】先生おっしゃる通りですね。

 

【衞藤座長】眼科領域の話と色覚の話だけが今議論されていますけど、カラーソフトコンタクトレンズとか近見視力検査ということも説明がありました。

 

【木村委員】一つ前に戻ってしまい申し訳ありません。先ほど濁川先生と同じ、群馬県で数年前になりますが、県教育委員会へ学校現場の眼科医の先生から、検査の必要性について御意見がありました。その後、県教育委員会として、特定の学校だけでなく県全体の学校に養護教諭・保健主事・学校長へ、児童生徒に対して必要に応じた対応ができるよう話をしたことがあります。もう一度徹底して、情報の共有をする必要があると思います。文部科学省からすぐにというわけではなく、それぞれが動くべきことだなと考えます。また、子供たちにもやはり必要なことではないかと思います。高校へ勤めているとき、デザイン関係の会社へ希望する生徒が、なかなか思いどおりにいかなかったケースもありました。できるだけ早い対応が必要だとそのとき感じました。

 

【石川委員】このエピソードを読ませてもらって実際こういうことがあるんだなと改めて気付かされました。子供たちが自分のこの健康を自分の身体のことを知っていて、上手に付き合って生きていかなきゃいけないわけなので、学校に入ってからというだけではなくって、もっと養護教諭として私も保護者にどんどんアピールしていかなきゃいけない問題なのかなということも感じました。あわせて、母子保健の方からでも、例えば幼い子供たちだったらゲーム、がんがんやりますのでそういうところからもっと気付いてあげる。親が、母親が気付いてあげられる視点をアピールしていく必要があるのかなということも併せて思いました。学校でできることとしては、やっぱり雪下委員も先ほどから何度もおっしゃられていますが、入学するときの保健調査で、こういう項目を付けてあげて、私たちはそういう生徒をピックアップして、眼科医さんにつなぐとかそういう個別の指導を、対応をしっかりしてかなきゃいけないなと。きちんと学校保健安全法でも健康相談、養護教諭も行えるというところも位置づけられましたので、個別の対応をしっかりしていく必要があると。そこでまたうまくフォローしていくことができるのかなというふうには感じました。あと高校なので入学説明会という場もありますから、そういうところでも保護者の方にもどんどんアピールしていきたいなというふうには思いました。

 

【衞藤座長】男子人口の5%程度にある健康の課題ですから非常に多いのは事実だと思いますので、ただいろんな経緯がある中でこれは議論されて、またそれがこういう形で提起されている。学校だけの話ではないだろうと思います。

 

【南委員】いいですか。中学校の校長ですけども。現状なんですけども、進路説明会において工業系の高校とか美容とかそういう進路に対してですね。それを持って合否判定に全く関係ないということも前提にですね。進学した先でですね、やっぱりいろんなハンデがあるのかも分からないからよく自分の中で、御家庭でというような形で調べてですね。適性をというような説明は進路説明会のときには付け加えたりもします。私も実は、県教委におるときにですね。へき地ということで、眼科専門医のおらないへき地への眼科だけのですね。専門医を連れての検診行ったんですけど。そのときは地域に専門医がおらないから眼科検診を、ずっと専門医を連れてですね、やっていました。そのとき、初めて私も分かったことなんですけども、近視は眼鏡を付ければ矯正できるけど低学年の遠視というんでしょうか。近見視力ですか。これはもっと早くに発見して、早くに治療してあげた方がいいという眼科医の説明を受けまして。本当に小学校1年生2年生の状況で放置している状況が多いので、視力低下というんでしょうか。そのことにつながるということも受けましたし、このへんは、やはりある程度、低学年で少し啓発すべきだなということも感じました。それから中学生は、カラーコンタクトですね。やりがちで。本当に障害になるということ分からずにですね。もうやっている子が大変多い状況で、そういうものについてももっともっと啓発というんでしょうか。すべきだなということも今も感じています。今、先生のお話し聞かせていただきながら本当にそういう面での啓発というんでしょうか。もっともっとすべきだなと実感いたしました。以上です。

 

【衞藤座長】ありがとうございました。近見視力検査の話が出ていないようですけど、先ほど話題になりました平成14年の日本学校保健会の健康診断調査小委員会の報告書に近見視力も課題として最近取り上げられるようになったということで。今後いろいろなことに関してエビデンスが積まれていくようなことを暗示するような内容だったんですけど。そのときは宇津見先生も委員で参加されていました。しかしなお、10年以上経過してもまだコンセンサスが得られてないという、それほど難しい何か問題があるんでしょうか。

 

【宇津見理事】要するに我々、眼科医会と学会とはまた別ですけど、学会の専門家はそんなに重要視していないんですよ。そこが問題で、日本眼科医会でもその一般の会員の先生方の場合、そういう先生方は余り気に留めていない場合があるんですね。ですから、やはり学会・医会の先生方のコンセンサスを得られないとなかなか学校現場に導入するのは大変かと。実際に先ほどの濁川先生のお話でも一つの検査を導入するというのは大変なことで。近見視力表も全部買わなきゃいけませんし、それを全員にやるとなると普通の視力検査よりもっと時間かかるかもしれないですね。ですから逆に、将来的に何に基づいて近見視力を導入したのかと言われたときにきちっとしたエビデンスがない限り、なかなか導入が難しい。一部の本当に熱心な先生方の論文はあるんですけども、それは元々ごく一部なので。なかなか同意が得られないというのが今のところの現状ですね。

 

【衞藤座長】ありがとうございました。宇津見先生ので話が戻りますが、色覚の方で資料1-1の2ページ目の上から4行目。結論の4行目に、後ろのカンマの次に希望者に対してという言葉を加えるということで訂正するという本日の資料は、それが正式なものであるということにしてもよろしいでしょうか。

 

【宇津見理事】はい。ちょっとその前の説明文の前に、その行ですね。同意書付きの説明文を配布することを周知し、これ「同意書付き」と入れてください。

 

【衞藤座長】保護者に対して同意書付きの説明文を配布することを周知し、そのあとは希望者に対してと入れるんですか。

 

【宇津見理事】はい。

 

【衞藤座長】希望者に対し、色覚検査の実施促進を望むという訂正をして本日は、資料はそういうことでよろしいでしょうか。

 

【宇津見理事】はい。

 

【衞藤座長】ありがとうございます。それでは時間を超過しておりますので以上で議題の1は終わりにしたいと思います。(後略)

 

<論議中略>

 

【衞藤座長】それでは本日は、これで終了したいと思います。

以上

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【資料1-2】宇津見参考人提出資料

資料
1)平成14年3月29日、学校保健法施行規則の一部改正等について(文部科学省スポーツ・青少年局長通知)
2)宮浦徹、色覚に関するアンケート調査、47支部の学校保健担当者に聞く、日本の眼科、75、1521、2004
3)平成22,23年度先天色覚異常実態調査、日本の眼科、83,1421-1438、2012
4)平成22,23年度先天色覚異常実態調査続報、日本の眼科、83,1541-1557、2012
5)日本眼科医会学校保健部 色覚関連事業(平成14年~21年)
6)宮浦徹、宇津見義一、柏井真理子、他:学校での色覚検査のあり方、日本の眼科、84、2-6,2013.
7)宇津見義一:カラーコンタクトレンズについて、日本学校保健会会報「学校保健」、302号、9月発行予定

資料の要旨

1)平成14年3月29日、学校保健法施行規則の一部改正等について(文部科学省スポーツ・青少年局長通知)
1)の要旨:
学校医の健康相談において、色覚に不安を覚える児童生徒及び保護者に対し、事前の同意を得て個別に検査、指導をおこなうなど、必要に応じ、適切な対応ができる体制を整えること、定期の健康診断の際に、必須項目に加えて色覚の検査を実施する場合には、児童生徒及び保護者の事前の同意を必要とすること、今後も、色覚異常検査表など検査に必要な備品を学校に備えておく必要があること。

2)宮浦徹、色覚に関するアンケート調査、47支部の学校保健担当者に聞く、日本の眼科、75、1521、2004
2)の要旨:
平成16年7月、全国47都道府県眼科医会学校保健担当者に色覚アンケート調査を実施し、色覚検査の必要性に対して約90%が検査の実施を望んでおり、色覚検査を実施している小学校の割合は、「ほとんどの学校で実施」が約10%、「半分ぐらいの学校で実施している」が約13%であった。

3)平成22,23年度先天色覚異常実態調査、日本の眼科、83,1421-1438、2012
4)平成22,23年度先天色覚異常実態調査続報、日本の眼科、83,1541-1557、2012
3,4)の要旨:
 公益法人日本眼科医会(以下日眼医)は平成22~23年の2年間に「色覚異常の受診者に関する実態調査」を実施した3,4)。その結果、全国657の眼科診療所から941件の報告があった。
受診動機では、未就学児は50例(5.3%)で、「子どもの色覚がおかしい」が58.5%、「身内の色覚異常がいる」が38%であった。
 小学生は494例(52.5%)と最も多く、受診動機で「学校健診」が69.4%と大半を占めた。前述のように大半は色覚検査を実施していないが、一部の学校では検査を継続して実施していたことが「学校健診」によって指摘された子どもたちの受診動機として強く影響している。
 中学校は69例(7.3%)で、「進学」が11.6%、「就職」が1.4%であり、高校は127例(13.5%)で、「進学」が21.3%、「就職」が45.7%と急増する。中学校、高校では今後の人生を左右する進学・就職を見据えての受診と思われた。一方、眼科を受診するまで異常があることを認知していた割合は中学校が54.7%、高校が54.5%であり、半数近くが自らの色覚異常に気づかずに進学・就職に望んでいたことが示された。
 工業高校入学後の色覚検査で異常を指摘され困惑した例、航空、警察、消防、鉄道関連の採用試験でのトラブル、美容師専門学校、調理師学校入学後のトラブルなど深刻な問題が報告された。
 大学・短大・専門学校は52例(5.5%)で「就職」が80.8%と高かった。
 社会人は106例(11.3%)で、「仕事上のこと」が51.9%で、生活に直面した深刻なものが多かった。
 日眼医は平成15年度から色覚検査が実施されなくなって10年間、希望者に対する任意の色覚検査を奨励し、学校での色のバリアフリーの充実に力を注いできた。色のバリアフリーは文部科学省、日本学校保健会と連携しパンフレットを作成し、全国の学校関係者に配布し、養護教諭に向けた「色のバリアフリーを理解するためのQ&A」を日本学校保健会のホームページへ掲載、さらに各地区教育委員会関連研修会にて講演などの啓発を重ねてきた。
 しかし、多くの教育委員会は学校保健法施行規則から色覚検査が削除されたことをもって「色覚検査を実施しないこと」と捉える傾向が強く、任意の検査として継続できた地区はごく一部にとどまり、色覚異常への認識は年々薄れ、学校での色のバリアフリーの進展もみられない状況が続いている。
 学校での色覚検査は、学校での色覚のトラブルを回避するために、小学校低学年(以前は4年生)に実施すること、また、進路指導の一環としては中学1~2年で再度実施することが必要であると考える。そのためには、学校関係者、保護者に対しての説明文を配布することを周知し、色覚検査の実施促進を望む。

色覚に係わるエピソード
 トラブルやエピソードでは、660例の事例報告があった。未就学児では日常の遊びや、園でのお絵かき、ぬり絵の際に、保護者や園の先生など周囲の者が気づく事が多かった。小学校低学年では、自身の色覚異常に気づいていないことが多く、学校でのトラブル、とくに図画教科の報告が多かった。小学校高学年では、周囲からの指摘、自身での気づき始めたエピソード例が増えた。中高生では美術の授業や美術部の課外活動の中で、周囲から指摘され、色覚異常に気づいた例が多かった。日常生活で電気器具の充電、交通信号など光源の判別のエピソードが多い。進学・就職では、入学後の色覚検査にて異常を知り、将来に不安を覚える報告が多い。仕事では微妙な色識別が求められる職業などでの困難を覚える事例が多い。

未就学児
・ゲーム機の充電の色(橙と黄緑)が区別できない
     日常の遊びのなかで保護者が気づく例が多かった
     光源色とくにLEDの色判別が困難
・お絵かきで顔を緑色に塗った
・ぬり絵のとき、黄緑をオレンジに灰色をピンクに塗る
     園の先生が気づき保護者に伝える例が多かった
・姉に色間違いを指摘されよく喧嘩になる
     園児では自分の異常には気づいてない

学校生活(小学生)
・黒板の赤いチョークを読みとばした
     学校における黒板とカラーチョークのバリアが未だ解決されていない
・色間違いをして先生に「ふざけてはダメ」といわれた
     小学校低学年で今も繰り返されている  
・色づかいが違うことを級友にからかわれ、自分は色弱だと思った小学3~4年頃より自身の異常に気づく例が目につく

中高生
・以前から変だと感じていたが、美術の授業で先生に指摘された  
・中学で美術部に入り、茶と緑の区別ができないことを自覚した
     美術の授業や部活で周りの者から指摘されたり、自ら周囲と異なることに気づいたりして自覚するようになる
・黒板の朱色の字が読みにくいのを近視のせいと思っていた
     判別が困難なことを色覚異常のためと思えない

日常生活
・茶色の犬、ハンバーグを緑という
     緑の犬はいない、ハンバーグは茶色という概念がない未就学児に見られる
・トマトの「熟した赤」と「熟してない緑」がわからない
・焼き肉で焼けているかを聞いてから食べる
     異常の有無にかかわらず、食事のときによく子どもが発する質問である
・ルービックキューブで色が分かりづらかった
・洋服を選んでいて色の違いが分からなかった 
・彼岸花が咲いていても遠くからだと気づかない
     田んぼやあぜの緑をバックにした赤い彼岸花は気づきにくい
・信号は色の並びを覚えているので困らない
     LEDは白っぽく見えて判別しにくい
・赤と黒のボールペンの字を区別しにくい
     採点用のペンが利用されているが・・・
・尿路結石による血尿に気づかなかった

進学・就職
・工業高校に進学したが、入学時の健診で色覚異常を指摘され困惑した
     工業高校では入学時の色覚検査があるようだ。中学で工業高校進学者に対する進路指導として色覚検査を実施しておくべき。類似の報告多数あり
・自衛隊志望だったが色覚異常とわかり断念した
・警察官になる試験を受けに行き色覚異常を指摘された
     自衛官、警察官、消防士の他、航空、船舶、鉄道、バスなど乗り物関係も、色覚制限が多い
・美容専門学校を希望するもヘアカラーの区別困難
     男性の美容師志望者の増加
・調理学校入学願書の健康診断書に色覚異常の有無の欄があった
     フグ調理師の資格には色覚制限有り
・写真を扱う仕事に応募し、色覚異常の有無を問われた
     写真や印刷など、微妙な色の判別が求められる職業だが、色覚制限がないことも多く、就職後に困る

仕事に関するエピソード
・広告関係の仕事で色によるミスが続いている
・刺身の鮮度が分からず古いものをだした、肉の焼け具合も分からない
・クリーニング業で染み抜き作業の時シミの色が分からない
・仏像の色あせなどが判断できなくて困っている
・農業を希望して転職したが農産物に選別が心配
 特別な資格を取得してなくても職に就けるが、気づかないうちにミスしてしまう

5)日本眼科医会学校保健部 色覚関連事業(平成14年~23年)
H14年8月   九州ブロック学校保健・学校医大会での講演、
H14年から   6年間に日本の眼科に、色覚関連の執筆が18件
H15年12月  「色覚マニュアルー色覚を正しく理解するためにー」を日本医師会から発行した。
H16年7月   養護教諭・児童生徒向け教材の作成し配布した。
H16年4月   日眼医イラスト集の作成
H16年     色覚アンケート調査、会員自作教材5つ(18)、
H17年4月   教材用CD-ROM配布システムを開始した。
H17年9月   眼科学校保健イラスト集VOL.1を作成した。
H18年10月  住友スリーエム社「事務用カラーふせん」改善の要望書提出
H19年2月   住友スリーエム社文具・オフィス事業部マーケティング部長に説明
H19年4月   眼科学校保健イラスト集VOL.2を作成した。
H19年5月   日本学校保健会「色覚バリアフリー推進委員会」
H19年5月   「色覚異常を正しく理解するために」(患者向け冊子)を発行した。
H20年4月   「みんなが見やすい色環境」教職員向けリーフレットを全職員に配布した。
         「色のバリアフリーを理解するためのQ&A」日本学校保健会HPに掲載した。
H20年5月   日本学校保健会「色覚バリアフリー検討委員会」
H21年8月   色覚指導のガイドライン検討委員会
H22年4月   「小児に対する色覚一般診療の手引き」(眼科医向け冊子)を発行した。
H23年10月  平成22年、23年度先天色覚異常実態調査
H23年11月  平成22年、23年度先天色覚異常実態調査報告、同続報
その他:    日本医師会編「学校医の手引き」、
         毎年の日本学校保健会から「学校保健の動向」の執筆、
         毎年の全国眼科学校医連絡協議会での色覚対応や講演、
         日本臨床眼科学会インストラクションコース、セミナーでの啓発
                日本産業・労働・交通眼科学会での講演

7)日本学校保健会会報「学校保健」302号、9月発行予定
内容:「カラーコンタクトレンズについて」
執筆者:公益社団法人 日本眼科医会常任理事 宇津見義一
(内容略)

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今後の健康診断の在り方等に関する意見

平成25年12月
今後の健康診断の在り方等に関する検討会

2 学校の健康診断の各論について

2.健康診断における各分野の課題

 学校における健康診断は、大きく、身体全体、眼(め)、耳鼻咽頭、歯と口腔(こうくう)の領域に分けられる。今回、特に、眼(め)、耳鼻咽頭、歯と口腔(こうくう)の領域について、個別の分野が抱える課題を整理した。

(1) 眼(め)の領域
○学校での健康診断において、色覚の検査が必須項目から削除されてから約10年が経過した現在、自身の色覚の特性を知らずに卒業を迎える子供が増加している。色覚による就業規制がある職業もあるため、子供たちが自身の色覚について知っておいた方が良い。色覚の検査については、保護者や本人の同意のもとで行うことが極めて重要であるが、中には、色覚に関する知識が乏しい家庭もあることから、色覚検査の基本的事項について、積極的な周知を図ることも必要ではないか。なお、実施体制については、学校医との相談の上、適切な体制を整えることが大事である。

スポーツ・青少年局学校健康教育課
電話番号:03-5253-4111(内線:2918)