Q3 少数色覚について簡単に説明してください。

 

お答えします 目の奥にあるセンサー細胞のちがいにより、
       多くの人とちがった色の感じ方のことです。
       ちがいにほかの人はほとんど気づきません。

 

 

 

★ 少数色覚とは、多くの人が感じる色の見え方と多少ちがった色の見え方のことです。でもこれだけでは説明になりませんね・・・

 

 

★ ここではまず、人はどのようにして色を感じるのか、どうして色の感じ方にちがいができるのかを説明します。なお、少数色覚には、生まれつきのもの(医学的には「先天色覚異常」)と生まれてからのちに身に備わるもの(同「後天色覚異常」)がありますが、色覚問題につながるのは前者の方がほとんどです。そのためここでは後者については触れていません。

 

 

★ 目に入ってくる光の情報から、わたしたちはまわりの様子を知ることができます。光は電磁波の一つで、さまざまな波長で伝わっていきます。もともと光に色はありませんが、波長の長さはわたしたちに色の感覚を起こさせる性質を持っています。

 

この図は、電磁波全体の中で生物が感じる可視光線が、ごく限られた一部分であることを示しています。

 

★ ヒトには目の奥に暗い場面で機能するセンサー細胞の杆体(かんたい)と明るい場面で機能するセンサー細胞の錐体(すいたい)があります。そのうち錐体が色を見分ける役割をもっています。ヒトが暗い場面で色を見分けることが難しいのは、錐体が明るい場面でしか機能しないからです。

 

 

★ 光は物体に当たって反射すると波長が変わり、その情報を錐体から神経を通して脳に伝わります。脳は、その情報から「色という認識」をつくり出すのです。目の前にある物体に色がついていると私たちは感じますが(それがまったく間違いだともいえませんが)、じつは「色」はそれぞれの人が頭の中でつくりだしている「感覚」なのです。

 

 

★ 光の波長はナノメートル(nm、100万分の1mm)という単位で表されます。ヒトが認識できる光の波長はおおよそ360nmから830nmです。これを可視光線といいます。380~450nmの光は紫と感じ(それより短いと紫外線で見えません)、625~780nmの光は赤く感じます(それより長いと赤外線で見えません)。赤外線リモコンは光を発していますが、それはヒトに見えない光なのです。

 

 

★ ヒトは基本的に3種類の錐体をもっています。長い波長を感じるL(Long)錐体、短い波長のS(Short)錐体、その間のM(Middle)錐体があります。
 多数色覚(眼科学会でいう「正常色覚」、3つの錐体がそろって機能しているという意味の「3色覚」という)は、男性の約95%、女性の99%以上は多数色覚で、アルファベットでC型(Common=コモン、多数派、一般という意味)という呼び方もあります。

 

 

★ C型以外が先天少数色覚で、理論的には、次のように細かく分類されます。

 しかし実際に現れるのは、L錐体にちがいがあるP型(Protan=医学用語の1型の意)、またはM錐体がちがいにあるD型(Deutan=2型の意)がほとんどです。

 

 

★ LまたはM錐体がちがうと表現しましたが、それには2つのパターンがあります。一つは、LまたはM錐体がC型とはちがう感じ方をする場合(表では☆印)で、もう一つはLまたはM錐体が感じていない場合(表では空白)です。前者を少数3色覚(医学用語では異常3色覚、以前は「色弱」と呼んでいました)、後者を2色覚(医学用語も同じ、以前は「色盲」と呼んでいました)と言います。
 このように、ちがいがあるのがL錐体かM錐体かということと、少数3色覚か2色覚かの組み合わせがあり、先天赤緑少数色覚は理論的にはおよそ4つのパターンに分けられるのです。
 また、T型(Tritan)、A型(Achromatopsia)もありますが、存在の数もごくわずかで解明されていない点がまだ多くあります。

 

★ ここまでの説明を聞くと「3つある錐体の1つがない」とか「ちがう感じ方をしている」など、初めて聞いたらびっくりするかもしれません。しかし、この表現に惑わされて「少数色覚は大変なこと」と受け取らないでください。
 ヒトのL錐体とM錐体は感度がとても似ています。これは、ヒトの祖先の哺乳類ではL錐体とM錐体は1つでしたが、進化のなかで2つ分かれたからです。つまりヒトの場合、3色覚というより2色覚の亜型(派生的な型であること。サブタイプ)であるといえるのです。

 

 

★ ヒトに大昔からある色覚の違いは病気であるとか「困る」ようなものではなく、むしろヒトに必要な多様性だったと進化学や生物学などでは考えられています。
 しかし、ヒトが色を自在に扱えるようになった近代以降、色の感じ方は「多数色覚者が正しく感じている」と決められ、社会のさまざまな色表示などは多数色覚者が見分けやすい配色だけを基準として決められていきました。少数色覚者の感じ方は、配慮されなかっただけでなく、その感じ方が「異常」や「病気」としてとらえられ、少数色覚者そのものが排除の対象となったのです。

 

 

★ 少数色覚者は日ごろ常に「困る」ことは少なく、成長するにつれてその「困り」も少なくなっていきます。男性の5~8%が少数色覚者といわれますが、周囲はほとんどの場合それに気づかないことがそれを証明しています。

 

 

★ ちなみに近年、現代の医学的色覚検査では検出できない微妙な色覚のちがいがあることも明らかになってきています。
 さらに、色認識には、その人の記憶や認識、さらに感情も加わります。同じ色でもちがって感じたり、ちがう色が同じに感じたりする錯覚は、色に限ったことではありません。これらは、私たちが見えているものを認識するのに視覚情報だけではないものをもとにしているためなのです。このような点をふまえると、自分が目の前のものを見て感じている色と隣にいて同じものを見ている人の感じ方は、むしろちがっているととらえる方が正しいのかもしれません。

 

 

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